新喘息薬「オマリゾマブ」 重症者の半数に適応
横浜市の男性会社員Aさん(53)は、7年ほど前から、幼いころに患っていたぜんそくが悪化した。
薬を使っても、せきが止まらない発作に度々襲われ、夜中に病院で点滴を受けたり、会社を休んだりした。
今年3月に発売された新薬「オマリズマブ」(商品名・ゾレア)の注射を定期的に打ってもらうと、発作が減り、夜もぐっすり眠れるようになった。
ぜんそくは、空気の通り道である気道が狭くなり、呼吸が苦しくなる病気。
せきが止まらないなど重い発作が出ると、酸素不足や意識障害に陥り、最悪の場合は命を落としてしまう。
国内の患者数は400〜450万人と推計される。
90年代、ぜんそくの原因は「気道の慢性的な炎症」と分かり、炎症を抑える吸入ステロイド薬が治療の中心になった。
これに気管支拡張薬や抗アレルギー薬を併用し、治療効果は格段に向上。
95年に7000人を超えていたぜんそく死亡者数は、2007年には約2500人にまで減った。
「残念なのは、複数の治療薬を最大限に使っても発作を抑えられない重症患者が、まだ少なからずいることです」と、昭和大呼吸器・アレルギー内科教授の足立満さんは語る。
同大では1割以上が重症患者だ。
重症患者にはステロイドの飲み薬を併用するが、吸入薬と違って長く飲み続けると、糖尿病や白内障、骨粗しょう症などになりやすく、できれば避けたい。
オマリズマブは、こうした重症患者を対象に承認された。
ぜんそくの引き金になるアレルギー反応を起こらなくする薬だ。
ダニやほこり、花粉などアレルギーの原因となる「抗原」が体内に入ると、身体を異物の侵入から守る血液中の免疫細胞のB細胞が、免疫グロブリンのG抗体(IgG抗体)を主に作り出し、対抗する。
これは正常な免疫機構の働きだ。
ところが、一部の人では、「IgE」という別の抗体が作られ、鼻や気管など粘膜の下にあるマスト細胞(肥満細胞)にくっつく。この細胞はアレルギー反応を起こす本体で、再び抗原が接すると、ヒスタミンなどの化学伝達物質を放出し、気道の炎症などを引き起こす。これがぜんそくだ。
オマリズマブは、IgE抗体と結合することで、抗体がマスト細胞に結合するのを防ぐ。化学伝達物質の働きを抑える従来の抗アレルギー薬とは異なり、その前の段階で作用する。
対象は、血液検査などでIgE抗体が確認できるタイプの患者で、重症患者の約5割を占める。ただし小児には使えない。
2週か4週おきに皮下注射し、吸入ステロイドなど基本的な薬はこれまで通り使う。
国内の臨床試験では、有効成分を含まない偽薬と比べ、ぜんそく症状が悪化する率が低く、気管支の状態も改善した。
Aさんの主治医で横浜市大呼吸器内科准教授の宮沢直幹さんは「副作用が心配な経口や点滴のステロイドを減らせる。重症患者は試す価値がある」と期待する。
ただ、費用が1本約7万円と高価で、健康保険の3割の自己負担でも、2週おきに3本ずつ使えば、負担は月に12万円を超える。国の高額療養費制度などを十分活用したい。
<ひと言>
喘息の原因となる、アレルギー反応を起こさせなくする薬というこなので、減感作療法のようなものなのでしょうかね?
重度の喘息は非常に危険で、辛いものですので、この様なニュースは嬉しいものです。
非常に有効な新薬だと思うので、早く値段が下がることを期待します。