皮膚再生 自分の細胞培養、移植
愛知県内の5歳の男児が2008年5月、火事で体表面の9割以上に重いやけどを負い、愛知医大病院(愛知県長久手町)に運ばれた。
自分の皮膚組織を培養して増やした「自家培養表皮」を8月と10月の2回、胸や腹、腕、足などに移植。今年3月、無事退院した。
表皮より深い真皮まで損傷が達するやけどが小児の場合なら全体表面積の15%、成人なら30%以上になると「重症熱傷」とされる。
外界から体を守る皮膚が失われると細菌感染し、敗血症を起こす危険を招く。死亡者は年間1000人以上と見られる。
聖マリアンナ医大(川崎市)形成外科教授の熊谷憲夫さんによると、治療では、患者自身の正常な皮膚をはがし、患部に植える皮膚移植が必要だ。
ただ、広範囲のやけどだと、十分な皮膚を確保するのが難しい。
亡くなった人から提供された皮膚を冷凍保存しておくスキンバンクがあり、解凍して移植する治療もある。
他人の皮膚なので、いずれはがれてしまうため、自分の皮膚が再生するまでのとりあえずの治療だ。
こうした問題を解消するために、患者自身の皮膚を培養して増やす再生医療が研究レベルで行われてきた。
そして今年1月、愛知県のバイオベンチャー企業「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J―TEC)」が開発した培養表皮が、重症のやけどに対して保険適用された。
病院から連絡を受けると、同社の社員が駆けつけ、患者から切り取られた切手大ほどの皮膚を持ち帰り培養する。約3週間で1000倍以上の面積に増える。
それを縦10センチ、横8センチのシート状に加工して、移植に使う。
自分の細胞を使った培養表皮は、はがれることなく、自分の皮膚と一体化する。培養にかかる3週の間、スキンバンクから提供を受けた皮膚などで患部を覆い細菌感染を防ぐ。
1枚のシートは30万6000円と高価だが、高額療養費制度の対象になり、患者の負担は、所得によって異なるが、月額8万円強で済む。
熊谷さんは「培養にかかる時間が短縮できれば、もっと多くの人の命を救える」と話している。
培養表皮を保険で使える病院は、熱傷担当の専任医師が常時1人以上いるなどの基準を満たす必要がある。
全国には聖マリアンナ医大や愛知医大のほか、千葉県救急医療センター(千葉市)や大阪府三島救命救急センター(高槻市)など約20施設ある。
<ひと言>
こういった再生医療が進歩する事で、今まで助けれなかった命も救えるようになる、とてもすごい技術の進歩ですね。
これからの医療は、再生医療の時代に入るので、もっと進歩する事で、確実に完治できる病気が増えるでしょう。
こういった研究をしている方達がいることを忘れてはいけないですね。
また、高額療費制度の対象になっているのも、負担が減りありがたいことですね。